フェリーを降りるとバスが待っていて、乗船客の半数以上がそのバスに乗り込んでいった。
私達はレンタサイクルを借りようとフェリーを降りて右手にある建物に入り切符売り場の女性に声をかけた。するとそこに連絡してくださいとのことだったので、言われた通り、レンタサイクルの前に貼ってあるポスターに書かれた番号に電話をかけた。
「今どこにいますか?」
「港です。」
「港?的山?」
「いえ神浦(コウノウラ)です。」
「え?神浦?それじゃーすぐそばにJAがあるからそこまで来てくれるかな」
「JA?・・わかりました」
電話を切って、連れにJAに来いと言われたと告げるが、JAってどこにあるの?と返される。
確かに、どこに・・・
フェリー乗り場の前は広場になっていてその向こうには山があり、そこに沿うように左右に道が伸びているだけだ。
右手は山の方に向かう道しか見えないし、左手の奥の方には確かに建物はちらほら見えるが、JAと言われても。
切符売り場の女性に声をかけて場所を尋ねるが「JA?この辺にJAなんかあったかしら・・?すみません、わからないですねぇ・・」と言われてしまった。
仕方ないのでもう一度電話をする。
「JAの場所がわからないんですが・・」
「え、神浦にいるんだよね?」
「はい」
「わかんない?じゃー、そっち行くから少し待ってて」
しばらく待っていたが一向に来る様子がないので、もう一度電話をした。
「どこにいるの?神浦?」
「はい、港のところに」
「ほんと?的山じゃないの?」
「的山?いや、神浦です、ここは神浦です」
と、言ったところで、切符売り場の女性が、ここは神浦じゃないですよ!的山港ですよ!と慌てて教えてくれたので、私も慌てて電話口で的山港だったと訂正して、またしばらく港で待つことになった。
待っている間、切符売り場の女性が、神浦にはフェリーが泊まらなくなり、今はこの的山港と平戸の往復の便しかなくなったこと、その為、フェリーが着くころに神浦行きの100円バスが出ることを教えてくれた。神浦の方が人が多く住んでるのに、なんでこんなことになったのかわからないとも付け加えた。
陽がどんどん高くなる中、原付バイクで年配の男性がやってきた。
つづく