到着したシェムリアップ空港は赤茶色の大きな屋根が印象的だった。
外に出てホテルの迎えを待っているとドコドコドコとリズミカルな音をたてながらトゥクトゥクがやってきた。小豆色に近い茶色の落ち着いたデザインのものだ。ごたぶんにもれず旅の定番の年季の入ったバンかセダンが来るのだろうと思っていたから意外でうれしかった。
トゥクトゥクにスーツケースを積んで伝統的な雰囲気の空港を離れていきながら、改めてここが世界遺産の町なのだと思った。
ご存知の通りシェムリアップはアンコールワットのある都市である。来てわかったが、シェムリアップの中に世界遺産があるというのではなく、シェムリアップ全体が世界遺産のようなところなのだ。世界遺産の中に町が出来たという感じだろうか。実際はそういうわけではないが、アンコール遺跡群はそれくらい規模が大きいのである。
物腰の柔らかい運転手に連れられて到着したホテルは、小さなブティックホテルで、着いてすぐのところに芝生の前庭のあるレストランがあり、壁がないのでタイルの床と籐の椅子が並んでいるのが見え、いかにも南国リゾートの趣きがあった。
その左側にプールがあり、飾り物のような小さなものだったが宿泊客が一人泳いでいた。
その脇を抜けて入った建物の中がフロントになっていて、ソファーに座りながら受付を済ませた。
ガイドブックでカンボジアでは自分で交渉するのも、ホテルで頼むのもトゥクトゥクの値段はそう変わらないということだったので、早速その場で明日以降のトゥクトゥクの手配をすることにした。シェムリアップの町はガイドブックの地図で見るとそんなに広そうには見えないのだが、それがかなり大規模で遺跡から遺跡を移動するのは徒歩ではほぼ無理と思われる。バスもないので移動手段はもっぱらトゥクトゥクかタクシーなのだ。自転車で移動している人達を何度か見かけたが道も悪く炎天下の中の彼らは大変そうに見えた。その点、風を全面に受けながら移動できるトゥクトゥクは砂埃にまみれてしまっても快適この上ない。
そういうことでトゥクトゥクを頼まない選択はなかったので、片言の英語で説明を受けることにした。
話を聞くと、どうやら迎えに来てくれた人がずっと面倒を見てくれるということで、もの静かなその人を気に入っていたので安心してお願いすることにした。アンコール遺跡を一日めぐるコースで10$である。
その後、部屋で休んでから徒歩15分くらいのところにあるナイトマーケットをふらつくことにした。