市場を堪能したあと、1駅だけ路面電車に乗ることにした。
先ほど市場に入るのに渡った線路ところが路面電車の駅だったのでそこまで戻る。電車はかなり頻繁に行き来している。
こちらの市場に来るときにバスが曲がったあたりに路面電車の駅があるのを見ていたので、そこまで乗ることにしたのだ。
電車はカラフルで可愛らしいものから、緑色の旧ソ連時代を彷彿とさせるようなものまで色々なデザインがあるが、車体はものすごく古い。まるでブリキのおもちゃのような風情である。
来た電車に乗り込む。木製のベンチが並んでいる。
他の電車には車掌がいるように見えたが、私達が乗った電車はワンマンカーだ。乗車賃を取りに来るものはおらず、一緒に乗り込んだ乗客も運賃を払いにいく様子もないので、料金は一律でウラジオストク市内を走るバスと同じく降車時に運転手に払うシステムなのだろう。
電車が走り出した。
おもちゃのような電車だが力強い走りだ。しかもものすごい揺れる。すいているので皆座っているが、この揺れで立っているのは大変だ。
ジェットコースターに乗った気分でいたら、すぐ次の駅についた。
運転手にお金を支払うと鷹巣展望台にいったときに乗ったケーブルカーでもらったような切手型のチケットを渡された。このチケットがまた別の電車で使えるというわけではないと思うので、領収書代わりといったところだろうか。
降りると古いショッピングモールのようなものがあったりしてにぎわっている。少し周りを歩いてみることにする。
こちらの方にも先ほどの市場とは比べ物にならないが、ブルーシートの小さな市場があった。コンテナをうまく改造して物販ブースにしているものもある。閉店のときはそのコンテナの扉を閉めるので、そうするとただのコンテナが並んでいるだけに見える。
市場と並んで工事中のところがあり、そこの前に看板が出ていたので近づいてみると、大きなショッピングモールができるようだ。この付近に、途中まで埋められ使えなくなっている路面電車の線路を見た。元々ウラジオストク市内にはいくつかの路面電車の路線があったらしいのだが、いつ頃かの市長の判断で路面電車廃止の方向になり、今は今回私達が乗った1路線のみの運行となっているらしい。
テレビでもウラジオストクの町を整備しているといったような政府コマーシャルも観たので、きっと国をあげて町の発展を目指していて、このあたりもその為の開発が始まっているのだろう。
このショッピングモールが出来上がると、この市場は閉鎖されてしまうのか、それか、ショッピングモールに市場が移る事になるのではないだろうか。きっとこのブルーシートの市場で人々がのんびりと働く風景はなくなってしまうのだろう。
町は生き物のように形を変えていくのは必然であるけれど、違う幼虫が同じ蝶になるようなことにはなってほしくない。サナギから飛び立つのは、知らない蝶であってほしいと思いながら帰りのバスに乗り込んだ。
つづく