時間が過ぎ、出発時刻まであと30分ほどになったので、そろそろ駅舎の中で待つことにした。
待合室は、駅の規模と比例しないくらい天井がすごく高く広い部屋で、シャンデリアも下がっていて
ヨーロッパを感じさせる素敵な造りになっていた。
出発時刻の15分くらい前になって、そろそろホームで待とうと入り口に向かうとキョロキョロしていたせいか、係員がどうしたと近づいてきた。言葉もわからないので列車の予約票を見せると、これはまだで、列車がやってくるときはアナウンスが流れるから、それまで待合室で待っていなさいとホームに向かわせてもらえなかった。もちろんロシア語が全くわからないので、そういっているという解釈に過ぎないが、いままで列車が来るときにはアナウンスが流れたのと、その係員が天井を指したり時計を指したりしたので、その理解でほぼ間違いないと思う。
おそらく親切心でそうしてくれたのだと思うのだが、私達はホームで待ちたかったのだ。でもそうすることもできず、すごすごと待合室に戻り時間が来るのを待った。
あと5分になろうとしたので、さすがにもういいだろうとホームへ向かうと、またあの係員がやってきて、まだだよというようなそぶりをする。そうこうするうちに、アナウンスが流れた。
これだ!と思い今度こそと思ったが、なぜか違う、これは違うといっている。時間ももうほぼ出発時刻なのに、違うということがあるのだろうかと思ったとき、東洋系の男性が、その係員に近づき何か話し始めた。
すると係員が私達を呼んでホームの方を指さしている。どうやら自分が間違っていることを気づいたのだろうか。ホームが駅舎側から3つ並んでおり、係員は2つ目のホームに行けと言っているようなので
急いで線路を渡り向こう側のホームに上り、係員を見ると頷いていた。
先ほど係員と話していた東洋系の男性も一緒にこちらのホームに来ていたので微笑みかけると、日本人ですか?と外国人なまりの日本語で話しかけてきた。驚いて日本語話せるんですか?と話が始まった。
どちらからこられたのか聞いてみると、韓国からウラジオストクに観光に来たとのこと。ウスリースクに戦争当時抑留されていた朝鮮人の記念館があるので今日はそちらを訪れ、その記念館の人達と食事をしてきてとても楽しいウラジオストクからの日帰り旅行になったと話していた。
何号車に乗るのか聞いたら違う車両だったので、残念ながらそこでお別れになったがウラジオストクは都会なのでとても面白いですよと教えてくれた。
列車がホームに入ってきた。
それに乗るのかと思ったら連れが、もう一つ後ろに列車が来てるよと言った。一つ目の列車は駅舎側の線路に入り、もう一つの線路に後からきた列車が入った。私達は列車に挟まれたホームにいる形になり、駅舎は見えなくなった。
私達の乗る列車は、後からきた方だった。もし一つ目の列車が入ってくる前にこのホームに渡らなかったら、この列車に乗れなかったかもしれない。あの韓国人男性がいてくれて良かったと思った。
つづく