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ウラジオストクのこと⑥

15分ほどで、アルチョームのバスターミナルに着いた。

車の止まっていない広い駐車場のようなところで降ろされる。

降りたらすぐ正面に小さな四角いコンクリートの建物がある。その左側に遮断機があり中にバスが1台止まっていたので、そこから建物の中に入ろうとすると警備員がここは入ってはいけない、向こうに行けと言っているようである。言われた通りに反対側に回ってみると、バスターミナルらしい入り口があった。そこに時刻表があったので見てみると、ウスリースクの文字がいくつか確認できる。金額も表示されている。ウスリースクまで1人219ルーブルらしい。

8時40分出発のバスに乗ることにして1つしかないチケット売り場に向かう。

ロシア語しか通じないのはわかっているが、行先と指を2本立て、お金を渡せば買えるだろうと簡単に考えていた。

「ウスリースク」「ツー」ジェスチャーを加えながら2人分として500ルーブル紙幣を差し出すが、なにか言っている。窓口に差し込んだ紙幣も押し戻されてしまった。困った。

連れと相談し、紙にロシア語で書いてみようということになった。バスの番号も書いたし今度こそ買えるはずだ。紙を見せると、逆にチケット売り場の女性から何か書かれたメモを渡された。お金も受け取る様子がないので、これはどういう意味なのか・・・

まったくわからない。そのバスはもう満席だからないということなのか?

どうしたものか、しばらくその場に立ち尽くし考えるが答えは何も出てこない。私達の他にもチケットを買いに来るロシア人が数名いて、何人かはチケットを手に入れられていない様子の人がいたから、バスのチケットを購入するのは案外難しいことなのかもしれない。

悩んだ末、この中に多少の英語を話せる人がいるのではないかと考えあたりを見渡すが、話せる人がいるように思えない。ふと、チケット売り場の左手に目がいった。白襟の真っ青なワンピースを着た売店の女性が目に入る。「エクスキューズミー、バス・・・」考えたら英語と言っても、自分もほとんど出来ないため言葉が出てこない。

売り子の女性が売店の中を指さし、何かを言ってる。商品を買いたいのかとでも言っているようだ。

「ノーノー、バスチケット」こういうときはジェスチャーである。チケット売り場を指さし例のチケット売り場の女性から渡されたメモを見せた。「ウスリースク」とたたみかける。

すると建物の隅に座っていた警備員を呼んた。

何かと思ったら、店番をするように頼んだらしく、警備員が代わりに店に立つとそこを離れて私達を建物の奥に連れていった。奥に鉄格子のドアがあり、そこから中に向かって大声を出す。中から先ほどのチケット売り場の女性が出てきた。そして、彼女から渡されたメモを見せながら何か話している。話が終わるとまた私達を元の場所に戻し、チケット売り場に並んで、メモを渡せというそぶり。

列に並び、順番がきたのでメモを渡す。

売り場の女性はなんだか不服そうな顔をしていたがレシート型のチケットが戻ってきた。

チケットが買えたのだ。

嬉しくなって、売店の女性にお礼を言いにいき、これがピロシキというものなのか、日本のカレーパンに似た形のパンと行きの飛行機の中で出た同じパッケージのジュースを買った。パンは暖めてくれた。

唯一話せるロシア語「スパシーバ」を繰り返し、売店を出る。

ピロシキと思われるそれの中身は、優しい酸味と塩味のキャベツなど野菜の和え物が入っていてとてもおいしかった。

つづく

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